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辺見庸 研究 ~内宇宙への旅~

辺見庸の発言は、ときに「荒れ球」や「魔球」もあるが、「剛速球」が身上である。その根源にある思考とは何か。

44.民主主義の腐敗・変質

民主化は、歴史を再検証し、全体主義(国家主義)への個の闘い、一人ひとり生身の言動であることの共通認識から始まる。それでこそ腐敗・変質しない民主主義が育まれる。 骨の髄まで腐った民主主義国家」に民主主義を訴えることの無効性を感じてもいい。 対…

43.個的不服従

逆説的反抗、徹底した不服従、テロ。情報ネットワーク手段を駆使した情報戦術や言論テロもある。これらの共通点は、個的不服従者が内的宇宙を凝視し続け、記憶が確固たるものであり、服従への反発・怒りが強いことに求められる。ひたすら高揚を求め声高に連…

42.阿川弘之、三浦朱門

権力亡者、排外主義者、民族主義者、拝金主義者、競争至上(弱肉強食)主義者、国粋主義者。 これらは米国の大統領選挙で勝ったトランプのことを言っているのではない。安倍晋三のことでもない。 選民思想、加害者意識欠落、天皇崇拝、夜郎自大、レイシスト…

41.陰画としての全的滅亡

この国の先人たちは一時代前に、大東亜共栄圏の妄想のもと、アジア諸国を侵略し約2,000万人もの人を殺戮した。それ以外にも多くの人々の生活を奪い一人ひとりの安寧を侵した。このような先人たちの罪業の反省と謝罪もないまま、われわれ末裔は記憶殺しのなか…

40.コンプライアンスと新聞

テレビや新聞で発信される情報がますます空虚になっている。たとえば「手ざわり感」「実感」が少しあるテレビ番組にしても、そこに組み込まれた「商品呪縛と批判精神の骨抜き」が露骨になっている。とくに民放は骨の髄まで消費資本主義に毒され、権力にすり…

39.陰熱

「右の頬を打つ者に対しては、左の頬も向けてやるがよい(マタイ5・39)」。この新約聖書のなかの有名なせりふは、一般には、「そんな横暴な人には、反逆や報復するのではなく相手を許し愛の心でもって対処し、相手の愚かさを知らしめるのがよい」という解釈…

38.心ばえ

辺見庸は「批判ばかりしている」「重苦しく暗い」「破局とか滅亡とかいう語が多く出てきて、未来志向に欠け、希望がもてなくなる」。そんな声が一部に聞かれる。 それは率直な印象としては受容できないことではなく、全くの的外れでもない。辺見庸の鋭い感性…

37.「スィン」と「クライム」:仮説の構築 

辺見庸の「罪に関する思考」に触発されて導き出した仮説。 1.「スィン」と「クライム」の領域には次の3領域がある。 〇人間 〇国家、社会(世間)、メディア等での権力 〇資本主義経済、国家社会資本主義 2 罪の種類と内容は次のように規定できる。 クラ…

36.罪についての仮説(その導出)

~辺見庸の内宇宙:罪をめぐる思考~ 辺見庸の言説の幅は広い。あまりに幅広い対象と表現の多様さに読者が戸惑うほどである。 政治問題や経済問題、哲学、文学・芸術に対して造詣が深く人間洞察が鋭い。評論はかなりラディカルである。これらの点が一般的な…

35.石原吉郎について

石原吉郎は、日本の敗戦後シベリアに8年間抑留された。帰還して詩人として活躍した。キリスト者でもあった。畏友・戦友として鹿野武一がいた。 辺見庸は、その石原吉郎に重要なことを学び、もしくは確認した。 〇「個」が重要であるということ。 →人の生と死…

34.憲法改定の前に「アジア歴史会議」を

先人達の侵略戦争の罪業を不問にし、猛省することもなく、その記憶(記録も含め)の抹殺または「改ざん」をしている。「孫子の代までも謝罪の宿命を負わせない」と言っても、侵略され殺されたアジア2千万人の孫子たちは歴史の記憶を決して忘れはしない。 近…

33.SEALDs 再考

辺見庸は、なぜ「SEALDs」(自由と民主主義のための学生緊急行動 )に批判的だったのか? あんなものをデモンストレーションというのなら、私も昨年来、何度か有事法制反対の「デモ」なるものに参加し、かつてとの様変わりに驚き、砂噛む思いどころか鳥肌が立…

32.マーケティング攻勢と消費態様

消費者は、管理社会化が広範囲に進む現代社会において、見せびらかし、自己満足、射幸、不定愁訴、飢餓感、ストレス発散、癒し消費等へと走る。1970年代に唱えられた「電通:戦略十訓」に基づく露骨なマーケティングは影を潜めたものの、「浪費を作り出す人…

31.消費資本主義批判

生産能力の飛躍的な発展と資本蓄積による独占及びそれを背景にしたグローバリズムという名の侵略主義が世界経済にはびこった。生産体制の問題が問われ、その変革を試みた計画経済(実質は国家社会主義であったが)が、20世紀末に相次いで破綻すると、旧来の…

30.谷川俊太郎という「詩人」

谷川俊太郎という世渡り上手な詩人がいる。詩人というよりは詩の「商品企画・販売業者」である。 彼は自分が「かわいい」といわれて、たいへんご満悦である。そしてこう言い放つ。 「男は愛嬌・女は度胸という世界に住もうと思った(笑い)。現代詩は尊敬さ…

29.NIMBY(ニンビー)

NIMBY(ニンビー)とは、Not in my backyard の頭文字をとった用語である。「迷惑」施設などを作る場合に「自分の裏庭だけはやめてくれ(他の人の裏庭に作ってくれ)」という意味をもつ。 ごみ処理施設ができる計画が発表されると地域ぐるみで反対する。どこ…

28.失見当識

大学などでは講義が開始される前にガイダンスとかオリエンテーションが行われる。それによって、履修科目の「目的・概要・到達目標・授業スケジュール」などを受講生がおおむね知ることができる。講義が興味がもてそうか、役に立ちそうかといったことも判断…

27.辺見庸 :Focus

辺見庸は、ジャーナリスト(共同通信の記者・特派員)出身の芥川賞受賞の小説家、中原中也賞・高見順賞を受賞した詩人、城山三郎賞受賞の評論家である。新聞協会賞、講談社ノンフィクション賞も受賞している。日本で押しも押されぬ言論人であり、その批評・…

26.悩乱

悩みの種が芽をふき、それが大きくなった時点ではっきりと悩みとして意識される。ほとんどの悩みはその前に何らかの出口が見いだされ、小さくなりやがて消えてしまうが、忘れられない悩みもある。 「精神の糸に、過ぎ去った寂寞の時をつないでおいたとて、何…

25.天皇制 ~「贖神」する権利の行使を~

先祖が朝鮮渡来人の豪族とする説がある日本の天皇であるが、天皇制が千年以上も続くなか、天皇自らが国の権力者として政治を行ったり、または時代の権力者たちが天皇を利用してきたという歴史がある。天皇ヒロヒトは、自身の戦犯者リストからの除外に腐心し…

24.根ぐされ 荒み

社会的・経済的な矛盾と不条理に起因した人心の「荒み」と「根ぐされ」によると思われる事件が起こっている。これらは従来の金銭がらみや恨みつらみに依るものではない殺人であるという点で異質であり、価値観の「底が抜けた」社会での事件といわざる得ない…

23.柄谷行人への「違和感」 

柄谷行人はアカデミックな思考をする批評家である。その言説は、吉本隆明ほど「ファンを唸らせる」ものではないものの、中上健次と深い親交があったことなど、その「知」は魅力を十分内包しているといってよい。 辺見庸は柄谷行人を評価している。柄谷の考え…

22. SEALDs への視角

この国では、民衆は闘うことを避け「和して同ぜず」を旨として集団的協調や長いものには巻かれろとばかりに諦観し、物言わず、服従で対処してきた。陰に陽に抵抗もしてきたが、暴動は少なかった。直情的行動様式より諦観・服従に意識が走っていく性向が根強…

21.吉本隆明 批判

主体性、原点、個体としての市民、自己批判、連帯と孤立、永続性などが論議された。それらは反スターリニズムとして「新左翼」のなかで熱く語られたのである。 左翼運動は組織によって展開されると思われていた中で、「組織悪」を指摘し「個」の重要性を説い…

20.武田泰淳について

辺見庸は武田泰淳を高く評価している。全くと言ってよいほど批判の言葉はない。 泰淳には、率直に好感をもっているのである。 武田泰淳(一九一二〜七六年)はわたしのすきな作家である。なぜすきかというと、安心して読めるからである。安心して読めるわけ…

19.俗情、佇まい  ~自省または自覚、自責、吐露(その3)~

社会的な名誉なり栄誉を得ると、ましてや活動期にそれらを得ると、二重人格と間違われるくらいの表裏異なる面が見え隠れするものである。 才能豊かである人は所謂「選良意識」をもってしまい、尋常でないことがその意識をますます増長させる。自己言及を怠り…

18.生きること、闘うこと   ~自省または自責、吐露(その2)~

どのようなことに心惹かれるのか、何を身上とするのか、それらを辺見庸は、自己の「根生い」の上に知識と体験を糧にして育み定着させた。薄っぺらな倫理意識や観念世界だけの意識としてでなく血肉化しているのである。 武田泰淳、プリーモ・レーヴィ、ジョル…

17.自省または自責、吐露(その1)

辺見庸は、作品のなかで率直に自省し、自責の念を述べ、心境を吐露している。これは生身の人間として生き、権威主義を拒否し、真摯に生きようとする辺見庸の佇まいの表れである。 鋭く激しい政治評論や国家論、マスメディア論、ラディカルな思索による死刑制…

16.執筆要請の減少

文筆業者も売文業者である限り、市場原理を了解しなければならない。 市場経済においては出版物も商品であり、売れなければ市場から退却を強いられる。出版社は固定費と限界費用と売上の関係から損益分岐点を下回っては経営が成り立たない。 そのうえ出版業…

15.信じられないこと

ある日、辺見庸は横浜駅西口前で、不思議な行動をとった? 天皇は、私から視線を移さずに、片手を軽くうち振り、「あっ、どうも」という調子で、首をこくりと小さく下げた。私も、つられて、こくりと会釈した。同時に、右手をズボンのポケットからそろりとだ…

14.拉致問題 

北朝鮮が日本や韓国から罪もない多くの民間人を拉致したことは許されることではない。拉致は国家の悪業・非道の行為である。拉致問題を国策、外交カードに利用する北朝鮮の権力者の罪は看過できない。 しかし、日本政府の世論操作に問題はないのか? 日本の…

13.安倍晋三

政治家は「国をよくするために」とか「豊かで希望のある国にするために」とかいう言葉をよく口にする。「美しい日本」などと歯の浮くようなこともかつては某政治家が言っていたが、今では聞かれなくなった。実像は権力亡者であって国民を愚弄し、薄汚い心根…

12. 小林秀雄の罪

小林秀雄の思想には強力な説得力がある。ものごとの「本質」ないし「核」への精神主義とでも呼ぶべき鋭い洞察に基づく断定的な文章が読者の心をつかむ。 辺見庸も学生時代に小林を読み、そして惹かれていた。 新潮社版小林秀雄全集は革背表紙の豪華本で、バ…

11.下降願望

上昇志向、権力志向、上流好み、それらの真逆が下降願望である。ドロップアウトという語もあるが、これは下降願望とすこしニュアンスが異なる。 下降願望とは一般的には、自分のいまの社会的位置や生活水準よりあえて低いところへ身を置きたいとの欲求である…

10.辺見庸による批判

ノートを繰っていたら、誰によるものかは不明であるが、次のような文章がみつかった。 「現実の中で否定し、破壊すべきは、我々の生の現実を支配する権力であり、その権力を支える社会体制であり、その体制を生み出す社会の資本制的な構造である」。「我々が…

9.それでも死刑に反対である

「死刑制度は原発に似ている(鵜飼哲)」と言われても、即座に理解できる人は多くはない。ましてや戦争や天皇制の問題にも通底している問題だとの考えにも思わず考え込んでしまうだろう。そのようななかで辺見庸は、死刑制度の廃止を強く訴えている。 死刑制…

8.鋭い言説、「過激」な発言

辺見庸の評論は「剛速球」である。常に真剣勝負だから、いい加減な「球」は投げない。そのような「投球」のなかで、思わず「おっ」と思ってしまう「過激」な「投球」(言説)がいくつか見受けられる。 「メディア知」または劣情に左右される「世間の常識」か…

7.透徹・鋭刃の言説

辺見の指弾は鋭刃の切れ味を示す。その対象は、 ジョージ・W・ブッシュ、オバマ、安部・麻生・小泉一派、天皇裕仁、阿川弘之、谷川俊太郎、林房雄ほか。 これらの人々の罪業が暴かれていく。 辺見庸の父親(和郎)に対しても複雑な心情で批判している。 特…

6.中間層の変質

保守化が世界的な傾向となり一部が右翼勢力として、弱者を差別し排除している。その一方でテロなどによる反撃が行われている。 報復の連鎖が断ち切れないのは今に始まったことではないが、そのなかで弱者はつねに苦しめられ財産を失い殺傷されてきた。こんに…

5.辺見庸ー作品の後景ー

表現されたものを知るためには、透徹した意識と眼力によって『作品』を感じ理解する。鑑賞が観賞にとどまるかぎり、作品を味到できない。ましてや鑑賞する者による意味づけによって意識と眼が侵されると、もはや観照は不可能になる。 「作品」が内包する「記…

4.辺見庸への問い

20世紀末から21世紀初頭にかけての、辺見庸の意識と言動を著作から探求し、まとめてみたい。 探求したいことを次の「問い」として示す。辺見庸の独自の見識を腑に落ちるまで知るために。 1 死刑制度反対の根本的な理由はなにか 2 なぜ「全的滅亡」なのか …

3.精神の地下茎(その2)

辺見庸の精神の地下茎は、高度な精神分析・心理学の有機的分析アプローチが不可欠だ。だが、それをもってしても「解明」できない魅力がある。 たしかに深層心理学や行動心理学が人の心の奥深いところでの実態を明らかにする。脳科学は脳の働きにメスを入れる…

2.精神の地下茎 (その1)

辺見庸の創作活動、表現活動の基礎ないし精神の地下茎は、生まれ故郷である岩手県石巻で高校までを過ごしたこと、そして新聞記者であり中国への侵略戦争に出征した父の影響を深く受けている。 石巻は、彼の作品の記憶の風景(後景)であり、石巻市南浜町は彼…

1.はじめに 

辺見庸は、日本を代表する言論人の一人であり、鋭刃の批評を展開する評論家である。 受傷のコスモポリタン、戦闘的ペシミスト、無頼派言論人、闘う芥川賞作家、流離のアナキスト、多彩な論陣を張るラディカリスト。さらに言えば、発言し続ける死刑反対論者、…