辺見庸 研究 ~内宇宙への旅~

辺見庸の発言は、ときに「荒れ球」や「魔球」もあるが、「剛速球」が身上である。その根源にある思考とは何か。

B-19  受傷者の表現

「ものを書くということは、俳句であれ詩であれ散文であれ、受傷が前提にあるのだと思います」。辺見庸はそう言っている(『明日なき今日 眩く視界のなかで』2012年)。 辺見が、雑誌『本の旅人』(KADOKAWA)に現在連載中の「月」というタイトルの詩的散文…

B-18 苦海浄土

石牟礼道子さんが2月10日に亡くなった。辺見庸は、彼女と一度じっくり対談し面識があった。 「天声人語」の書き手は、水俣病患者と一緒に運動した彼女の言葉の一部を次のように紹介している。(朝日新聞、2018年2月11日朝刊) 「患者さんは病状が悪いのは魚…

B-17 現実が引き裂かれる

辺見庸の作品の中にこんな文章が出てくる。 「現実を覆っていたことばとイメージが、現実によって引き裂かれてしまい、現実がその裸形の冷酷さにおいて迫ってくることになる」 (これは或る哲学者の言葉から、との文が続いているのだが・・・) うむっ!それ…

B-16 辺見庸の内宇宙ー探究・反逆・創造ー

辺見庸の心的世界をめぐって思索したことを、電子書籍としてまとめました。 不備な点や誤った理解もあろうかと存じましが、ご一読賜れば幸いです。 https://www.amazon.co.jp/dp/B079KC7GYG/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1517661590&sr=1-1&keywords=宮下…

B‐15 憲法九条制定の舞台裏

元首相で憲法制定に携わった幣原喜重郎の次の言葉が参考になる。かなり思い切った発言なので掲げる。 「非武装宣言ということは、従来の観念からすれば全く狂気の沙汰である。だが今では正気の沙汰とは何か。武装宣言が正気の沙汰か。それこそ狂気の沙汰であ…

B‐14  報復は報復を呼ぶ。アベはそれを知っていながら、自衛の名のもとに「殺し」、「殺される」状況作りに突っ走っている。

軍備増強しても、日米安保があっても、集団的自衛権を行使したって、いざ戦争になれば国民を守ることはできない。自衛隊だけでなく官民挙げて関与させられ犠牲者は百万人いや千万人以上が犠牲になるおそれさえある。「殺し」「殺される」社会をなくすことこ…

B-13 死刑制度が現存している限り、私たちは「殺人者」である。  

「個体知」「民主意識度」は死刑制度を考えることで高まる。ひとり一人の民主主義の意識と具現。死刑制度を熟慮し、自らの「個体知」を磨くことが当面必要であると思う。 訳のわからないまま選挙が行われ、訳のわからないまま選挙が終わる。誰が死刑廃止論者…

B‐8 新刊『沖縄と国家』について  

辺見庸と目取真俊の両氏の対談、印象深かったのは目取真氏の次の発言である。 実際に毎日300人以上の人がゲート前に座り込めば、機動隊も簡単に強制排除できないし、資材搬入ができなくて工事は止まるわけです。本気でやるということは、効果を出すというこ…

96.軍隊の本性 

司馬遼太郎は、生涯、天皇または天皇制について直接言及(論評)することを避けたが、高山彦九郎 ( 天皇を潜在的君主とする志を全国行脚して説いた )を、さりげなく好意的に評価する一文を残したりしている。 一方で、司馬にしてはめずらしく、先の戦争末期…

85.辺見庸 ×目取真 俊 : 対談

戦争へ向けて歩み始めている。 目取真俊 × 辺見庸の対談は、そのような情況かと思わされるなかでなされた。まさに時宜にかなった対談である。 だがこの対談、共同通信社の配信によって4月16日に沖縄タイムスと琉球新報に載ったものの、今のところホンド(本…

80.ある詩人の「剽窃」

辺見庸は10年ほど前にこんなことを書いている。 どだい、政治のなにが重要というのか。あれらの言葉の愚弄。空洞。あれらの言葉の死。ほら、そこの軒下に干してある黄ばんだおしめほどの意味すらありはしない。 『言葉と死 辺見庸コレクション2』毎日新聞社…