読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

辺見庸 研究 ~内宇宙への旅~

辺見庸の発言は、ときに「荒れ球」や「魔球」もあるが、「剛速球」が身上である。その根源にある思考とは何か。

13.安倍晋三

 政治家は「国をよくするために」とか「豊かで希望のある国にするために」とかいう言葉をよく口にする。「美しい日本」などと歯の浮くようなこともかつては某政治家が言っていたが、今では聞かれなくなった。実像は権力亡者であって国民を愚弄し、薄汚い心根しかなく、いざというときには主権者である国民よりも「自分」そして「国家」を優先する。「権力志向」が強く「陰熱」を有した政治家は最悪である。しかもその「陰熱」が、最高権力者のねじれた劣等感と狂信に着床し腐乱すると、とんでもない「狂熱」に変質し暴発する。この国では安倍晋三がまさにこれに当てはまる。

 

 安倍政権は、自国の姿が他国にどう見られているかということをわかっていない。自分はおとなしい性格なんです、自分は暴力をつかいません、というのは私どもの主観であり、自己申告にすぎないのであり、一国が平和的か好戦的かを決めるのはこちら側の主観ではないのです。それは中国であり、あるいは朝鮮半島のひとたちが感じていることなわけです。彼らには歴史的経験がありますから痛いほどわかります.怖いのです。いまの日本は怖ろしいのです。

『いま語りえぬことのために―死刑と新しいファシズム毎日新聞社、2013年、102ページ。

  

 決して一流の政治家とはいえない権力亡者一族の末裔である安倍晋三。彼の粗雑な思考、劣等感と狂信が強圧的な言動となって暴走している。一国の「リーダー」たる矜持も風格も感じられず、虚ろなステレオタイプな言辞を言い放っているだけである。以前は「友達内閣」を作ったが、挫折し、復活して今度は「服従者内閣」を組閣した。

 

 アジア太平洋戦争で日本が二千万人もの人を殺したことの罪を封印したまま北朝鮮や中国を利用した「ショックドクトリン」の行使と、当てにならない「期待効用」のモラトリアム策によって「統治」しているだけである。安倍を米国や天皇は信頼していないことは今や一連の傍証から十分にうかがわれる。ただし、彼らとて安倍を通じて自らの利を得ているだけなのだ。

 

 安倍晋三に対する辺見庸の批判は鋭い。安倍を「唾棄すべき」政治家そして人間であると考えていることは、辺見の文章から明確に読み取れるのである。 

 中国との領有権問題については「この問題に外交交渉の余地などない。尖閣海域で求められているのは、交渉ではなく、誤解を恐れずにいえば物理的な力だ」と断言しています。核兵器保有に関しては二〇〇二年五月に早稲田大学で開かれた講演で憲法上は原子爆弾だって問題はない。小型であれば…」とまで語ったことがあります。彼はこの考えをまだ捨ててはいないと思う。いざとなったら、戦術核ぐらいもって中国に対抗する、というのが安倍の好戦的な本音ではないでしょうか。歴史は目下、修正どころか安倍内閣により「転覆」されています。しかもこの内閣が世論の高い支持率をえてますます夜郎自大になっている。不思議で怪しい時代にわれわれはいる。

『同上書』94ページ。

 

 

 島嶼防衛というけれども、自分のほうから先制攻鑿をかけたりするのが海兵隊です。それから敵基地先制攻撃の権利を有すると。現行憲法下でもそれは可能だというふうに、安倍というひとは、副官房長官の時代から言っています。そうした考えかたを安倍首相は変えていない。彼には「民族および国家の危難を除去するため・・・」といったせつぱづまった事大主義、復古主義的発想がある。しかし安倍の思想の危険性はマスメディアによって隠されたままです.われわれは慄然とさえしなくなっている。

『同上書』103ページ。