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辺見庸 研究 ~内宇宙への旅~

辺見庸の発言は、ときに「荒れ球」や「魔球」もあるが、「剛速球」が身上である。その根源にある思考とは何か。

62.トランプ、COP21への裏切り

 マスメディアは、米国の「移民、難民の受け入れ拒否」や「反グローバリズム(貿易、経済、金融)」を報じている。

 トランプ大統領は、目先の利益と利己を求める大衆にすり寄り(または体現し)、失われた「米国ロマン」の復権を訴えている。まさにヒトラーの言動そのものである。

 アメリカファーストの実相が「アメリカの利己主義・排外主義」であることは、経済・社会・金融・軍事面だけではない。地球環境の保護、改善を目指す世界各国の努力に背を向け、COP21の決議を反故にしようとしている。

 これは米国が、人類生存の前提条件確保への努力を蔑ろにする暴挙以外のなにものでもない。

 2015年11 月にCOP21 と呼ばれる国連気候変動枠組条約第21回締約国会議がフランスのパリで開催された。この条約は地球温暖化問題に対する国際的な枠組みを設定した条約であり、大気中の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン等)の濃度を安定化させる(削減し続ける)ことを目的にしている。

 COP21のパリ協定では、世界共通の長期目標として平均気温上昇を産業⾰命前から2℃より⼗分低く保つ。1.5℃以下に抑える努⼒を追求することを決定した。主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新するという内容だ。

 米国はその努力をあざ笑うかのように、COP21から離脱したのである。日本の首相はそのことに対して公式に異議申し立てをしていない。

 現在の米国には、成熟した民主国家としての矜持はない。人類の生存基盤である地球環境へのまなざしを全く欠き、金権にまみれた劣情が噴き出ているのである。それは反エコロジーへの視点の転換だけでは済まされない問題である。

 辺見庸の次の指摘に耳を傾けなければならない。

    気候変動は二酸化炭素による温室効果だけが原因であるはずがない。しかし私たちは、温暖化を考えるときに戦争や核実験という重大な要因を捨象してしまう。そして、温暖化対策は「エコロジー」という言葉でくくられてしまうのです。

『たんば色の覚書 私たちの日常』毎日新聞社、2007年。のち角川文庫、2011年、129ページ。