辺見庸 研究 ~内宇宙への旅~

辺見庸の発言は、ときに「荒れ球」や「魔球」もあるが、「剛速球」が身上である。その根源にある思考とは何か。

B-10 過去は完了したか?  

 今さらながら日本による1910年から1945年までの朝鮮半島統治(植民地化)のことを思う。政治・経済・文化のすべての面での統治は、統治される側からすれば多少近代化の恩恵があったとしても、誇り高き朝鮮民族にとっては屈辱であった。

 朝鮮戦争によって分断された国家になったあとも「過去」は完了せず、二つの国は休戦中のまま米国主導の軍事・経済の世界戦略に翻弄されている。日本政府はそのはざまで狡猾にも政権保持と軍拡に走っている。

 

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 辺見庸は「北朝鮮を日本人が嫌うのは『自分の国の過去の貌を見るような、歴史心理学で言えば複雑な心性があるからではないか』」と言うが、そのような心性をもっている人の割合は(とりわけ三十代までの人に)わずかではないか。不十分な歴史教育と、意識産業としてのマスメディアが「記憶殺し」を行い、そのような世代を作ったのである。

  歴史に〈もしも〉と言うのはあり得ないが、「もしも日本による植民地支配がなかったら?」「もしも不幸な過去の歴史をもっと早く清算していたら?」拉致問題は起こりえただろうか。(辺見庸)。

 さら言えば日本が過去の歴史をもっと早く適切に解決していたら、北朝鮮のミサイル発射や水爆実験を連続して行っただろうか?圧力をかけ続け、もしくは何らの理由から現政権が交代したとして、それで朝鮮半島に平和が訪れるのか。

  世界の核兵器保有国による「安定」保持体制のなか、北朝鮮は自国の存続を核兵器保有によってのみ主張せざるを得ないところまで追い込まれている。北朝鮮の現政権の崩壊があったとしてもその後についてのグランドデザインが描けていない。中国やロシアと米日がそれをめぐる主導権獲得に躍起である。その意味でもそれらに国にとっては、北朝鮮の現政権の「暴発行動」は起きてはならないことなのだ。

 日米の醜悪な政権が一体となって「北朝鮮情勢」の「危機」を歓迎し捏造し利用していることは明らかである。日米は国内の政治・経済・社会状況の不安定を糊塗する手段にしているのである。その先には対中国との交渉力強化と封じ込めがある。

 マスメディアとその裏にある権力に翻弄されることなく、ニッポン人はニーチェのいう「末人」であることから脱しなければならない。