辺見庸 研究 ~内宇宙への旅~

辺見庸の発言は、ときに「荒れ球」や「魔球」もあるが、「剛速球」が身上である。その根源にある思考とは何か。

B -48 辺見庸の自己欺瞞 ー『コロナ時代のパンセ』をめぐってー

辺見庸は不如意な老体で命を長らえている。作家としては「出がらし」作品や厭世観を吐露する雑文を綴るだけの日々。直近では『コロナ時代のパンセ』。かつての辺見ならば、こんな作品を出さなかったはずだ。新型コロナが発生してから述べている部分はほんの…

B-47 詩という商品

辺見庸が、最近の自著・詩集『純粋な幸福』についてブログで語っている。 「初速好調。出足よし」と自画自賛しているのだ。評判を気にして出版社にかわって「番宣」しているようなものだ。 これまでの辺見は、自著の売行 なんか全く気にする素振りは見せ な…

B- 46 余話

辺見庸のブログが再開したようだ。 文章に迫力はなく、辺見の「絶望病」が進行しているのが目立つ。 『月』については全く触れていない。世の中も、それについては「完全スルー」状態である。内容の「推敲不足」から当然のことであるし、是非もないことでも…

B-45 隷属の呪縛を撃つ 

辺見庸が沈黙している。ブログを更新しないだけでなく、ブログの文章も昨年の夏にまでさかのぼって削除してしまっている。『月』の執筆に関するブログの文章も同時になくなっている。 そこで今回は、アベ(政権)について少し書いてみよう。 中堅政治学者の…

B-44  NHK /Eテレ “在る”をめぐって

辺見庸/出演(2019年1月13日放送)を視た。その感想を記しておこう。 いわゆる社会的弱者は自ら「無くてもよい」人間になったのではなく、初めから「無くてもよかった」のでもない。その問題提起はあってもよい。だが、ことの要諦は本当にそこにあるのか。 …

B-43(1) 「弱み」につけ込む

人間や組織が他の「弱み」につけ込むことについて、辺見庸は著作の何箇所かで触れている。彼はそのことについて深くは考察していないのだが、宮地尚子という人の著した本のなかで次の文章が目に留まった。 日本にも強く波及しつつある米国のネオリベラリズム…

B-43(2) 雲

天空に悠然と浮ぶ積雲。行雲流水に憧れる人も少なくないだろう。雲は絵画や詩、小説にも描かれてきた。時間や空間そして状況の変化によって雲はえも言われぬ造形美を見せる。(彩雲、滝雲、光芒など) 一方、異形の雲に驚くことがある(モーニング・グローリ…

B-42 米国の断末魔  

辺見庸は、小泉「構造改革」のときにすでに新しいタイプの「世界恐慌」を指摘していた。そして今や米国の衰退は明白であり、中国の国家社会主義に覇権を奪われつつある。口舌の徒たちの「うわごと」など吹き飛ばされている。 この情勢の基調について白井聡の…

B-41 どこへもとどかない

言葉がとめどなく拡散し流通している。そのうつろな情況に人びとの意識と感覚が麻痺してしまっている。霧雲がかかったようななかで眼と耳を研ぎすまさなければ自分を見失ってしまう。 「言葉とメディアはたんに資本の自己増殖の手段となってしまった。そうし…

B-40 しおどきだろう

辺見庸は、現在、どのような心境にあるのだろうか。 去る11月11日のブログでは「もういいのではないか。やめてもよいのではないか。いいかげんしおどきだろう・・・。」と書いてはいたが。 荒み切った社会・経済・政治そして言葉や知の情況の虚しさに絶望しなが…

B-39 敗戦後論  

ヤスパースは、全世界がドイツを弾劾しドイツ人を弾劾する中で、戦争に参加し推進し、または戦争を許し座視したドイツ人の戦争の罪として次の4つを挙げている。 「刑法上の罪」「政治上の罪」「道徳上の罪」「形而上的な罪」(K.ヤスパース『戦争の罪を問う…

B -38 消費「怠業」

消費資本主義の中で根腐れがないかというと、隠蔽しているだけで、地下茎部はもっとひどいかもしれない。(辺見庸の発言。対談『夜と女と毛沢東』吉本隆明・辺見庸、1997年 来年10月から消費税増税が施行される(らしい)。 消費税の徴税(増税)の大義はど…

B-37 いっそ滅亡を

鵺のような社会、欺瞞に満ちた世の中、窒息しそうな状況。 見て見ぬふりをしていても、やがて斃死してしまうか、それとも結局殺されてしまうか。「許せない」「やってられない」「暴いてやる」・・・。 暗く湿った発語。やがて疲労破壊やクリープ破壊を起こ…

B-36 辺見庸の講演会中止 ー3日後撤回

辺見庸の講演会が中止になった。予想されていたとはいえ(中止の伏線はあったし、今回の中止理由ではなかったものの氏の体調の急変も予想されていた)、残念である。辺見庸が「健在」である姿を見たかった愛読者はいたはずだ。 小説『月』は、人間とは何か?…

B-35 『月』(辺見庸 著)への一視角

小説『月』が、いよいよ2018年10月末に単行本として発行される。相模原の障がい者殺傷事件に発想を得た作品である。 相模原での障がい者殺傷事件では、のちにパーソナリティ障害と「診断」された青年(植松聖被告)が、施設で次々と重度障害者を狙って殺した…

B-34 「なぜ在る?無くても良いだろうに」: 最新作『月』について

江藤淳は次の言葉を残し1999年7月21日、自殺した。 「心身の不自由が進み、病苦が堪え難し。去る六月十日、脳梗塞の発作に遭いし以来の江藤淳は、形骸に過ぎず、自ら処決して形骸を断ずる所以なり。乞う、諸君よこれを諒とせられよ」 これについて辺見庸は、…

B-33 小説『月』の出版:執筆中断(放棄)宣言の顛末

辺見庸の『月』という小説がKADOKAWAの書籍PR誌『本の旅人』に連載されていたが(2017年11月号~2018年8月号)、連載は2018年8月号で最終回となった。その末尾には、次の表記はなかった。 *本作はノベルスとして小社より刊行予定です。 (最近の作品では次…

B-32 「月」

辺見庸が雑誌『本の旅人』に連載していた「月」(にくづき)が8月号で最終稿となった。終了の間際近くに連載中止(放棄)の意向が辺見によって表明されたものの、その後、彼は翻意し何とか最終回までこぎつけた。しかし辺見庸には描き切った満足感はないだろ…

B-31  彼我の狂気

相模原事件の植松聖被告は「意思疎通がとれない人間は安楽死させるべきだ」と言った。それは生まれてくる人間の生命の選択操作にもつながる考えだ。 優生思想には歴史があり、心の深奥でそれを肯定する者の存在を認めざるを得ないばかりか、人びとの心にひろ…

B-30  辺見庸:女性の「性」への視点

太宰治著『満願』の描写への辺見庸の視点についてみてみよう。 伊豆の三島だと思うのですが、太宰がひと夏をすごしていたところで彼が怪我をして病院にかよううちに医者と親しくなる。 そこにきれいなご婦人が週に何回かくる。病気のご亭主の薬をとりにくる…

B-29 辺見庸の「誤記」

辺見庸の注意力・集中力はかなり弛緩している。文章の誤字・脱字が目立つのだ。しかも、彼が「もう下手なものを書くことはない。ただよめばよい」、「第8回までつづけた『月』の連載をやめることにした」、そう決心させた梶井基次郎の作品(『犬を売る露店』…

B-28   辺見庸、「執筆中断(放棄)」の悩乱

辺見庸が、雑誌に連載している作品(『月』)の執筆を中断するという。(2018/ 5/ 29) もう下手なものを書くことはない。(略)第8回までつづけた『月』の連載をやめることにした。読者には申し訳ないとおもう。 その理由として、「ほとんどのことについて…

B‐27  辺見庸―毎日新聞に載ったインタビュー記事

辺見庸へのインタビュー記事を読んだ。毎日新聞の藤原章生/記者がインタビューしている。テーマは「官僚らによる一連の不始末」である。 辺見が2004年3月に脳出血で倒れ、その後復帰し『1★9★3★7』の発刊後、朝日新聞や日共などから疎んじられてますます孤立…

B- 26  天皇に手を振る辺見庸

石牟礼道子さんが、晩年に美智子皇后と縁をもち、胎児性水俣病患者と天皇との面会(2013年10月)の橋渡しをした。このことに対して、辺見庸は次のように述べている。(このことは前にも書いたことがある)。 「時間の芯の腐蝕と天皇家賛美には、なんらかのか…

B-25 辺見庸の誤謬

現代経済は消費によって牽引され、人びとが商品に呪縛され心身が商品に浸潤されている。辺見庸は消費資本主義について次のように発言している。 実感的に言えば、市民なんてこの日本にいやしないのです。いるのは、ただ消費者だけです。われわれは消費する人…

B-24 正義の戦争(just war)

一定の条件をクリアすればjust warとして許されるという考え方がある。 例えば、「最終手段または自衛行為として、そして行使される力の規模が適正でかつ可能な限り民間人が暴力にさらされない、といった制限条件下での戦争であればjust warである」とされる…

B-23 止まったままの時計

広島と長崎に「新型爆弾(原爆)」投下の恐れがあることを軍部は事前に察知していた。にも関わらず、投下当日はなぜか警報が解除された状態であったという。警報が発せられていれば少なくとも何万人の命が助かっていたはずだ。 しかも原爆投下予知関連情報な…

B-22 空費だ、世界なんて

月刊『本の旅人』に連載中の「月」(辺見庸)。 そこにさりげなく組み込まれている至言。 「ひとのやることのほとんどは、だれかのまねなんだってさ。(中略)にんげんのやることのほとんどがじぶんだけのオリジナルでなければならないとしたら、大混乱だよ…

B-21 心ばえ

森友・加計問題の茶番劇がマスコミをしばらく賑わしていたが、アベ首相夫妻の直接関与はなかったとの「詭弁」で肝心のことがほとんど「解明」されないまま終わろうとしている。そのかんひたすら自己保身を図る「北朝鮮の独裁者」が政治的駆け引きに走る。J …

B-20 辺見庸の最新作  

雑誌『本の旅人』に掲載中の「月」で、辺見庸は晩年の自らを絞りだすように表現している。2004年3月に新潟で講演中に脳出血で倒れ翌年がんがみつかって以降、心身の疲れと苦痛が次第に厳しくなっているのが読み取れる。後遺症は寛解するどころか悪化している…